究極のサーキュラーエコノミー! ビール屋が作ったカレーとは?

日本最大級のオープン・イノベーション・カンファレンス「Japan Open Innovation Fes2023」が、去る9月29日〜30日にベルサール渋谷にて開催された。これは、137社・1200人・79会社で81出展ブースが参画した一大イベント。しのぎを削って共創を行なってきたコラボ企業が競い合う「COLLABORATION BATTLE2023」を勝ち抜いて優勝した企業のストーリーを取材した。

偶然の出会いから誕生した、ビールに合うカレー

映えある優勝は、漆黒な佇まいで話題を誘った「ハマクロカレー」。「横浜ビール」と「良品計画」と「kitafuku」の3社に「横浜市循環局」が協賛した究極のサーキュラーエコノミー食品だ。これは、賞味期限が近くなり、ロスになってしまう「横浜ビール」社が販売している「ハマクロビール」を使用。さらにクラフトビール醸造過程で排出されるモルト粕パウダーを使ったレトルトカレー。カレー作りで定評の高い「良品計画」が、試食に試食を重ねてモルトの風味とコク深い、ビール屋らしい味わいに仕上げ、横浜ブランド豚「はまぽーく」を使った地消地産の逸品となった。
 

「横浜ビール」社は、創業25年目を迎えるローカル・ビア・カンパニー。人と人を繋ぐビールを通して横浜の暮らしをワクワクさせる取り組みをしている企業。あるSDGsイベントで「横浜ビール」広報の横内勇人と「良品計画」横浜事業部の相良俊行が出会ったことから、運命的な今回のプロジェクトがスタートしたという。

美味しさの理由は、甘味の強い豚肉「はまぽーく」を横浜ビール・ブランドである「ハマクロ」に一晩漬け込んで熟成させた手間にある。豚の味わいとモルト粕の香ばしい風味に、黒ビールのコクと苦味が相まって、フルーティな酸味と旨味が引き出された、これまでにない本格的なレトルトカレーが完成したのだ。

このレトルトカレーを入れる容器にも徹底的にこだわったという。ビールの製造工程から出るモルト粕を再生紙「クラフトビールペーパー」としてアップサイクルしているスタートアップ「kitafuku」社。同社のお洒落でシンプルな封筒型パッケージを採用。そして、これらの取り組みに共感した「横浜市資源循環局」の協力のもと、3社共同企画商品の「ハマクロカレー」が満を持して誕生したのだ。

挑戦理由は、横浜に特化&環境問題解決への熱き想いから

──今回なぜコラボレーションバトルに挑戦されようと思いましたか?また、ご苦労された点がありましたら、お聞かせ下さい。

横内勇人(横浜ビールPR&FUN PROJECTゼネラルマネージャー):5年以上前からずっと、弊社のビールを使ったレトルトカレーを販売したいと考えていました。そんな折「良品計画」の相良さんと出会ったことで、横浜に特化し、環境に優しい商品を開発しようというプロジェクトがスタートしたのです。何より、一番の想いは、地元である横浜の仲間達との意義深い取組みを多くの方に知ってもらいたかったこと。その想いで挑戦したのですが、心を砕いた点は2つありました。3社それぞれの良さと役割を限られた期限内にまとめること。また、社会に対してメッセージ性をどう伝えていったらいいか、でした。

相良俊行(「良品計画 横浜事業部」地域MD担当マネージャー):今回のプロジェクトは、地域との密着した活動強化を柱として、社会的に意義深い取組みを推進する目的を持って、挑戦がスタートしました。苦労話ではないのですが、3社それぞれが、ベストな商品を目指す故にコストが想定より増えてしまい(笑)。そこで、レシピ変更を行ったりした結果、納得いく味と価格に見合う商品が完成しました。

松坂匠記(「kitafuku」代表取締役):メンバーの想い、熱量、取組み自体を多くの方にどう伝えていったらいいか、について、かなり試行錯誤を重ねました。ただ、これまでの過程を振り返ってみると、想いは、ただひとつ。「クラフトビールの街、横浜での共創活動を知っていただきたい」に尽きたように思います。
 
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文/中村麻美

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